2017年03月22日

なぜトランプは大統領になれたのか

本誌の連載コーナーでもおなじみの西森マリーさんが書かれた新刊「ドナルド・トランプはなぜ大統領になれたのか?アメリカを蝕むリベラル・エリートの真実」(星海社新書)を送っていただき、拝読しました。
タイトルにある通り、大方の予想を裏切って?合衆国大統領に選出された共和党代表のドナルド・トランプ氏。でもそれは予想外のことではなく、必然だったということを米国在住の西森さんは明かしていきます。ムスリムでもある西森さんから見たアメリカの実情が暴かれていて、たしかにオバマ政権のやり方にうんざりしていたエリート層でない多数のアメリカ国民が、これまでの民主党政権に反旗を翻したことは、数々の我々日本人があまり知らない現実問題の積み重ねからも納得させられる結果だったようです。オバマ政権のやり方で満足できる人もいたのでしょうが、それはアメリカ人の一部であり、その一部の中核をなす人々を常に一方通行的に見ている諸外国の人には、「なぜあんな暴君が大統領に選ばれるのか?」ということにつながるわけです。
西森さんは、暴君とみられるトランプのもう一つの側面を論じるとともに、オバマやヒラリーのやり方=民主党のやり方、考え方のほころびを突いてきます。やむにやまれず共和党を選んだという人もいると同時に、トランプに夢を託したアメリカ人も多いという現状が書かれています。
先日のアカデミー賞やゴールデングローブ賞でも、やはり反トランプ色は色濃く、我々はメディアを通してそういうネガティブ・イメージのトランプしか知らないといっても過言ではないかもしれません。でもそんなトランプを選んだ国民はみんな無知蒙昧なのか? 差別主義が蔓延しているのか? という疑問もありました。この本には、その答えのいくつかが記されているようです。
憂慮されるのは、二分化されたアメリカ国民がいつまでも対立を続け、国の未来に向けての足並みがそろわなくなることかもしれません。それを一つにまとめる力がトランプにあるかどうかはこれからずっと見ていかなければならないでしょう。でも筆者は、有能なビジネスマンだったトランプはアメリカを再び偉大にな国にする力があると信じています。その可能性を示唆する内容のこの本、一度読んでみては?
posted by 編集局長 at 15:10| 日記

2017年03月19日

「わたしは、ダニエル・ブレイク」

昨年カンヌでパルム・ドールを取ってからずっと見たいと思っていたんですが、試写が始まったのが、オスカー候補作の試写の時期と重なって、そちらの作品群を優先して見ていたので、結局見そびれてしまい、公開二日目でようやく見ることができました。
その間に、もうストーリーの流れも、どんなシーンがあるかもわかってしまったので、あまり感動できないかなと思っていたんですが、これはそんな杞憂を吹き飛ばすくらい、しっかりした映画でしたね。ケン・ローチが一時発表した引退を撤回してまで撮りたかった作品ということで、どんなものかと思っていましたが、まさに入魂の一作。しかも英国の雇用支援金問題を扱ったシンプルかつストレートな物語で、彼はこれで何が言いたいのかひしひしと伝わってきます。彼がもっとも大切に思うのは一人一人の人間に尊厳があるということ。それをないがしろにする政府のやり方に真っ向から批判をしているのです。「もうタイムアップは近い」と。
以前、ローチが日本の高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した時、記者会見で彼を見たのですが、受賞を光栄と受け止めながらも、賞金を「国鉄分割民営化に反対した闘争団に寄付する」と宣言したのを聞いて、この人はとことん硬派だなと感じ入りました。そんな彼が80歳を目前に完成した本作は、まさに「これを言わずには死ねない」というような気概も感じられて、もしかしたら今までのローチ作品で一番好きかも?と思えました。必見です。
posted by 編集局長 at 20:14| 日記